在留資格とは?よく見かける在留資格の雇用可否を徹底解説!

在留資格に関する外国人雇用の基礎知識

外国人は誰でも簡単に日本に来て住むことができるわけではありません。まず、日本政府の許可、いわゆる「ビザ」が必要となります。

「ビザ」は、 外国人が日本へ入国しても問題ないと示す書類の「ビザ(査証)」と「在留資格」の、2種類があります。

「在留資格」には、外国人が日本で従事できる活動内容も記載されています。それによって仕事ができるかどうかが変わるので、外国人雇用をする前にしっかりと確認しましょう。

在留資格とは

「在留資格」とは、外国人が日本で滞在できる証明です。外国人が日本に来る前に、その目的を国に提出します。そして、審査を行って、適切な「在留資格」を外国人を付与します。「在留資格」によって、外国人が日本で従事できる活動が変わります。

外国人が日本に滞在するためには、必ずどれか1つの在留資格をもっていなければなりません。「在留資格」がないのに日本にいるのは「不法滞在」となります。

くわしくはこちら:不法就労の外国人を雇ってしまったら!?外国人雇用のリスクと回避方法

また、「在留資格」には在留期限と呼ばれる有効期限があります在留期限が切れてしまうと在留資格が失効となるので、そのまま日本に居られません。日本に引き続き残りたい時は更新が必要となります。「在留資格」の審査は出入国在留管理庁(旧入国管理局)、つまり法務省の管轄となります。

在留資格とビザ(査証)の違

在留資格によく間違われるビザ(査証)ですが、両者の違いは大きく3つあります。

まず、書類の目的が違います。在留資格は外国人が日本に滞在できる証明書類に対して、ビザ(査証)は外国人が入国可能という許可書類です。外国人が入国したあと、ビザ(査証)が失効となり、代わりに「在留資格」が、日本に来た理由や証拠になります。

そして、所轄機関が異なります。在留資格の審査と発給は法務省の出入国在留管理庁の管轄ですが、ビザ(査証)の発給は外務省の日本大使館や領事館の管轄です。そのため、それぞれの審査基準も異なります。たとえビザ(査証)を取得したとしても、在留資格をもらえず入国できない可能性があります。

さらに、申請の場所も違います。在留資格は国内にある地方出入国在留管理局に申請しますが、ビザ(査証)は海外にある日本大使館や領事館にて申請します。

どうして在留資格を知らないといけないの?

外国人の在留資格によって就労可否が変わってくるからです。近年、日本の外国人労働者は増加しており、街に出れば外国人店員などを見かける機会も多いのではないでしょうか。しかし、当たり前のように働いている彼らも所有している在留資格によって就労制限が大きく変わります。

就労制限がない「永住者」「定住者」などの人もいれば、限定された仕事にしか就けない「特定技能」の人もいます。また、資格外活動許可を取得しないと就労できない「留学」の人もいます。

在留資格ごとの正しい就労制限を知らないと、本来働けない外国人を雇ってしまい不法就労を助長したとして罪に問われる可能性もあります。そうならないためにも複雑に異なる在留資格ごとの就労制限をこの記事を通じて学んでいきましょう。

29種類の在留資格

2022年2月現在、合計29種類の在留資格があります。29種類の在留資格は「身分・地位に基づく在留資格」と「活動類型資格」に分けられます。また、それぞれの在留資格の就労制限が異なります。

くわしくはこちら:【決定版】在留資格一覧表|全29種類と就労可否まとめ

身分・地位に基づく在留資格

身分・地位に基づく在留資格とは、決められた身分または地位を有するものとして日本に在留することができる資格です。例えば、日本人と結婚した外国人が「日本人の配偶者等」の在留資格を与えます。

この在留資格を取得した外国人は、日本で従事できる活動の制限がほぼありません。したがって、日本での就労も可能です。

これに分類されている在留資格が「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4つです。

在留資格説明
永住者法務大臣から永住 の許可を受けた者
日本人の配偶者等日本人の配偶者・子・特別養子
永住者の配偶者等永住者・特別永住者の配偶者及び本邦で出生する子
定住者第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人

活動類型資格

活動類型資格とは、外国人がそれぞれ決められた活動を行うことによって日本に在留することができる資格です。

この在留資格には、外国人の日本で従事できる活動が決められています。そして、それ以外の活動を行うのは基本的に禁止されています。例えば、「介護」の在留資格を所持している人は、介護福祉士以外の仕事に従事できません。

2021年6月時点では、25種類の在留資格が活動類型資格に属しています。

在留資格説明就労制限
留学
教育機関の学生・生徒就労不可
家族滞在在留外国人が扶養する配偶者・子ども就労不可※
特定活動法務大臣が一人ひとりの外国人について特に指定する活動を行う者許可の内容によって変わる
短期滞在観光客など90日以内の滞在者就労不可※
外交外国政府の大使や公使、およびその家族一定範囲内で就労可能
公用外国政府の大使館や領事館の職員、およびその家族一定範囲内で就労可能
教授大学や専門学校の教授や研究者一定範囲内で就労可能
芸術作曲家や小説家など音楽、美術、文学の仕事を従事する者一定範囲内で就労可能
宗教布教や宗教活動を行う者一定範囲内で就労可能
報道記者やカメラマン一定範囲内で就労可能
高度専門職
1号/2号:法務省令で決める基準に適合する高度人材一定範囲内で就労可能
経営・管理企業の経営者や管理者一定範囲内で就労可能
法律・会計業務弁護士や公認会計士一定範囲内で就労可能
医療医師や歯科医師や看護師一定範囲内で就労可能
研究政府機関や私企業の研究者一定範囲内で就労可能
教育教育機関での語学教師一定範囲内で就労可能
技術・人文知識・国際業務通訳や技術者や私企業の語学講師など(就労ビザだと言われている)一定範囲内で就労可能
企業内転勤日本企業の海外支店から日本への転勤者一定範囲内で就労可能
介護介護福祉士一定範囲内で就労可能
興行俳優、歌手、スポーツ選手など一定範囲内で就労可能
技能外国料理の調理師など、産業上の特殊な分野に熟練した技能を要する業務を従事する者一定範囲内で就労可能
特定技能
1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人
2号:特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人
一定範囲内で就労可能
技能実習
1号/2号/3号:技能実習生一定範囲内で就労可能
文化活動日本文化の研究者就労不可※
研修研修生就労不可※

※就労不可だとしても、資格外活動許可を取得すれば一定程度の就労が可能となります。

くわしくはこちらの記事:【決定版】在留資格一覧表|全29種類と就労可否まとめ

よく見かける在留資格6つ

これからよく見かける6つの在留資格について詳しく紹介していきます。

「永住者」:就労制限のない自由な在留資格

在留期間期限なし(7年に一度在留カードの更新が必要)
就労制限制限なし

「永住者」は日本人と同様、職種に制限がなく、在留期限もありません。そのためほかの在留資格と比べて労務管理が容易であり、長期的な人材確保が可能です

また、介護や接客など日本語でのコミュニケーションが求められる仕事において活躍している「永住者」も多いです。「永住者」には原則10年以上の日本滞在や素行良好などの条件があります。滞在歴が長いから日本語堪能な人の多い理由のひとつと言えるでしょう。

「特定技能」:即戦力となる外国人の在留資格

在留期間1号:1年、6か月、4か月(通算上限5年間)
2号:3年、1年、6か月
就労制限1号:14の特定産業分野のみで就労可
2号:建築、造船・舶用工業の2分野のみ就労可

「特定技能」とは、特定な業界における深刻な人手不足を解消するために2019年に設立された在留資格です。在留資格を取得するためにそれぞれの分野の試験に合格する必要があるため、特定技能外国人には一定の専門性があります

しかし、受け入れにあたって特定技能外国人の支援体制において一定の条件を満たしていることが条件となっております。支援を外注する場合1人あたり月30,000円~の費用も発生してしまうことから「特定技能」の雇用コストは高いと言えます。

「技術・人文知識・国際業務」:正社員雇用の定番な在留資格

在留期間5年、3年、1年、3か月
就労制限技術や知識などの専門的な業務のみ就労可

大学や専門学校で専攻した科目と従事する職務内容が関連していることが在留資格の条件であることから一定の専門知識があります。また大学や専門学校に通っている間の素行も在留資格の審査対象に入るため、基本的に問題を起こす事もすくなく扱いやすい人材であると言えるでしょう。

ただし、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では配膳や清掃などの単純労働が禁止されているのでこの制限を超えてしまうと不法就労事件となる可能性もあります。不法就労にならないためにご注意ください

くわしくはこちらの記事:【随時更新中】不法就労助長事件一覧|不法就労ポイントも対策も解説

「技能実習」:就労目的ではない在留資格

在留期間1号:1年、6か月(通算最長1年)
2号:2年、1年、6か月(通算最長2年)
3号:2年、1年、6か月(通算最長2年)
就労制限転職不可で在留資格で定められた職種のみ就労可

「技能実習」とは日本の国際貢献の一環で、発展途上国の人々が雇用関係のもと日本の産業における技能を習得するための在留資格です。

技術習得のため高校卒業後すぐ来日する若い人材が多い傾向とあります。少子高齢化から若者が不足する現在において、技能実習生の雇用で若い人材の確保が見込めます。また、技能実習生の仕事に対する向上心も高いと言われることが多いです。

しかし企業規模によって採用人数に制限ありというデメリットがあります。また国や監理団体への書類提出が多いため、採用時の工数もほか他の在留資格と比べて多いです。なお、面接から就労までに約半年間かかりリードタイムが長いこともデメリットです。

「留学」:外国人留学生の在留資格

在留期間4年3か月、4年、3年3か月、3年、2年3か月、2年、1年3か月、1年、6か月、3か月
就労制限原則不可。出入国在留管理庁の「資格外活動許可」を得た場合のみ風俗営業を除き週28時間以内の就労が可能。

原則就労不可ですが、「資格外活動許可」を出入国在留管理庁から取得できれば留学生でも働けます。また、在留資格の申請手配が不要となるため、「技能実習」や「特定技能」などより留学生のほうが採用工数が低いというメリットもあります。

ただし、就労時間に制限があります。1週間に最大28時間のみ働けることからフルタイムでの雇用が難しいでしょう。

なお、学生の身でもあり仕事における専門知識や経験はあまり期待しがたいので、特別な職業訓練を受けなくても従事できる仕事にアルバイトとして活躍する留学生が多いです

「家族滞在」:就労外国人の家族に向けた在留資格

在留期間5年、4年3か月、4年、3年3か月、3年、2年3か月、2年、1年3か月、1年、6か月、3か月。扶養者の在留期間によって変動。
就労制限原則不可。扶養者の収入だけでは経済的な自立が困難な場合のみ特別な許可を得て1週間28時間以内の就労可能。

「家族滞在」とは就労を目的とする外国人の被扶養者に発行される在留資格です。被扶養者とは、扶養者から保険料、税金の軽減など経済的援助を受けている人のことで、外国人の場合夫や妻、子どもが該当します。

被扶養であることから、扶養者の収入だけでは経済的な自立が困難な場合のみ特別な許可を得て就労が許されます。ただし、許可を取得したとしても1週間に28時間までの就労しか認められないため、留学生と同じくフルタイムでの雇用は難しいでしょう。

職種においてはゲームセンターやパチンコ屋などの風俗営業を除くと特に制限がありません。また「家族滞在」は専業主婦・主夫の割合が多く留学生が学校に通う日中の間にも就労可能というメリットがあります

在留資格の確認は在留カードで

「在留資格」と「ビザ(査証)」の違い

外国人を雇用する前、彼らの在留資格を確認する必要があります。先述の通り、在留資格によって外国人の就労制限が異なるため、確認せずに雇用してしまうと、就労制限を超えた労働をさせてしまい、不法就労助長罪に問われ懲役や罰金が科される可能性があります。

不法就労助長罪に問われないために、外国人を雇用する時は、在留資格と就労制限を確認しないといけません。そのため、在留カードを提示してもらうことが必要です。

在留カードとは

在留カードは、3ヶ月以上日本に滞在する外国人に与える身分証明書です。入国審査が完了したら在留カードをもらうことができ、日本に滞在する間は常に携帯する義務があります。

在留カードには、外国人の名前、生年月日、性別、国籍・地域、日本での住所、在留資格、在留期限、就労の可否などを記載されています。16歳以上であれば顔写真もあります。

くわしくはこちらの記事:在留カードとは「在日外国人の身分証明書」

偽造在留カードに要注意

在留資格と就労制限を確認する前に、まず在留カードの有効性を確かめましょう。提示された在留カードが偽物である場合、カード面の在留資格関係なくその外国人の雇用を避けたほうがおすすめです。

従来、目視や出入国在留管理庁が提供している「在留カード等番号失効情報照会」サイトでの確認が主流でした。ただし、偽造在留カードの精度も高まっているので、専用アプリを利用しカードの有効性を確認する企業も増えています。

くわしくはこちらの記事を:【2021年5月更新】要注意!出回っている偽造在留カードの最新情報

在留カードを交付されない対象

在留カードは、次に該当する人には交付されません。

  1. 在留期限が3ヶ月以下の人
  2. 「短期滞在」の「在留資格」の人
  3. 「外交」「公用」の「在留資格」の人
  4. 「特別永住者」(在日韓国人、在日朝鮮人など)
  5. 「在留資格」がない人

5.の「在留資格」がない人というのは、密入国する人のような不法滞在者を指します。 雇用してはいけない人なので注意してください。

在留資格にかかわる3つの手続き

ここでは、外国人を雇用する際に重要な手続き3つを紹介します。

在留資格認定証明書交付申請

在留資格認定証明書とは、法務大臣が発行する、入国する外国人が在留資格のいずれかに該当することを認定する証明書です。この証明書の交付申請は、海外から外国人を呼び寄せて雇用する場合申請しないといけない手続きです。

雇用が決まったあと、外国人の学歴や職歴を証明できる書類と業務内容を記載された書類を用意して、近くの地方出入国在留管理局にて交付申請を行いましょう。

在留資格認定証明書が下りたら外国人に送付してビザ(査証)の手配をしてもらいましょう。

くわしくはこちらの記事:就労ビザの申請の流れや注意点をチェック

ちなみに、審査の基準が異なるため、在留資格認定証明書が発行されてもビザ(査証)を必ず発給されるわけではないので、覚えておきましょう。

在留資格認定証明書交付申請書

在留資格認定証明書の有効期限は3ヶ月

在留資格認定証明書は発行後3ヶ月の有効期限が付いています。注意点として、その有効期限は「ビザ(査証)」が取得するまでの期限ではなく、日本へ入国する期限です。

また、在留資格認定証明書を発行された後3ヶ月以内に日本に入国してない場合、証明書もビザ(査証)も失効となるので、改めて申請する必要があります。

在留資格変更許可申請

在留資格変更許可申請は、外国人の在留資格を変更したい場合に行う申請手続きです。例えば、留学生を新卒として雇用する際に、「留学」の在留資格から「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」など就労ビザと呼ばれる在留資格に変更します。

在留資格認定証明書交付申請と同じく、在留資格変更許可の申請にあたり、外国人の経歴の証明書類と業務内容が記載された書類の提出が必要です。在留資格変更許可申請は、外国人本人で行うことも可能です。

在留資格変更許可申請書

在留資格更新許可申請

在留資格には有効期限が付いており、「在留期限」といいます。在留期限が切れたあと、外国人が原則帰国しないといけません。もしそのまま日本に残りたい場合、在留資格更新許可申請を行って、在留資格を更新する必要があります

くわしくはこちらの記事:在留カード更新はいつ?|必要書類とタイミングを解説

在留資格更新許可の申請にあたって、業務内容が記載された書類を提出する必要があります。用意でき次第書類を外国人に渡して提出してもらうのが一般的です。

在留資格更新許可申請書

「在留資格」の取り消しについて

「在留資格」が期限内で失効する場合があります。主には2つあります。

ひとつめは、外国人が1年以上の懲役が科された場合。もうひとつは、「在留資格」に決められた活動を3ヶ月以上に従事していない場合。例えば、「技術・人文知識・国際業務」と呼ばれる就労ビザの外国人が3ヶ月以上就職せずそのまま日本にいると「在留資格」が失効となります。

まとめ

外国人が日本に来る時は、必ず「ビザ」が必要となります。「ビザ」は、外務省が管轄している日本大使館や領事館が発行する「ビザ(査証)」と法務省管轄 出入国在留管理庁が外国人に付与する「在留資格」です。

「在留資格」は、外国人が日本で行える活動です。そのため、「在留資格」によって雇用できるかどうかが変わりますのでしっかり認識する必要があります。

くわしくはこちら:【決定版】在留資格一覧表|全29種類と就労可否まとめ