
2019年4月に「特定技能」という新たな在留資格が創設されました。それにより、農業において外国人を雇用することができるようになりました。
特定技能の外国人は、技能水準と日本語能力水準の両方に満たす必要があるので、即戦力が期待できるでしょう。ただし、雇用にあたる業務内容や雇用期間に関する注意点がありますので、気を付けないといけません。
農業人材の状況
求人倍率を見てみましょう。求人倍率とは、求職者1人あたり何件の求人があるかを示すもので、高ければ高いほど企業の人材確保が難しくなります。2017年は、農業分野の有効求人倍率は1.94倍(農耕作業員1.71倍、養畜作業員2.80倍)となっています。全国平均の1.54倍より、2割ほど高いですので、農業における人手不足は厳しくなっています。
また農業労働力支援協議会によると、2017年の時点で農業就業者は約7万人不足しているとされています。さらに、高齢化も課題のひとつとなります。2017年時点で農業就業者の68%が65歳以上、49歳以下は11%となっております。
農業就業者の減少・高齢化を背景として、人手不足が早急に改善する必要があるでしょう。
農業の外国人材受け入れの必要性
農村地域において、全国を超えるペースで人口減少が進んでいます。2015年の高齢化率は都市部の24.5%に対して、農村地域は31.2%になっています。今後も農村地域では全国を超える減少率で人口が推移すると見込まれています。
そのため、農業について基本的な知識と技能がある外国人の受け入れが解決策の1つとされています。ここで農業の「特定技能1号」が設立されました。
農業分野の特定技能外国人の即戦力
特定技能は、業界において即戦力となる外国人材を受け入れるため設立されました。外国人が農業に関して基本的な知識や技能を有することが求められます。
また、スキルだけでなく日常的なコミュニケーションのためにも円滑な日本語能力を求められます。
ですので、外国人が農業の特定技能1号を申請するには、技能水準と日本語能力水準に満たす必要があります。
技能水準
農業において一定の知識・技能が持っているのかをを測定するために、2つの基準を設けています。いずれかに満たさないといけません。
- 農業分野の「特定技能評価試験」に合格すること
- 農業分野の「技能実習2号」を修了したこと
1.特定技能評価試験の合格
農業分野の特定技能評価試験、いわゆる農業技能測定試験は、全国農業会議所によって作成されました。試験の効果の検証は、農林水産省の監督の下に年1回に行っていますので、試験の信頼性が高いと言えます。
農業技能測定試験の合格者は、日本国内での農業の実務経験が3年以上であると認定されています。
試験内容は、耕種農業と畜産農業の2種類に分かれています。それぞれ「学科」「実技」「日本語」がテストされます。
耕種農業 | 畜産農業 |
① 学科 ② 実技(イラスト・写真による判断式(CBT方式)) ③ 日本語
| ① 学科 ② 実技(イラスト・写真による判断式(CBT方式)) ③ 日本語 |
技能実習2号の修了
耕種農業と畜産農業の技能実習があります。技能実習は1号と2号に分かれていますが、技能実習2号を修了した外国人のみ、特定技能を申請できます。
技能実習2号を修了するには、日本で3年以上の農業の実務経験が必要となります。
日本語能力水準
「国際交流基金日本語基礎テスト」のA2レベル、もしくは「日本語能力試験」のN4以上に合格する必要があります。
これらに合格すると、基本的な日本語が理解できると認定されます。また、自分の背景や身の回りの状況など、簡単な言葉で説明できます。
ただし、技能実習2号の修了者は少なくとも日本に3年住んでいるため日本語の試験が免除となります。
農業分野の特定技能外国人雇用の注意点

農業における特定技能の外国人を受け入れる際に注意すべき点があります。例えば、従事できる業務内容や、受け入れる人数、期間です。詳細を見てみましょう。
農業の特定技能1号の業務内容
農業分野の1号特定技能外国人が従事できる業務は、特定技能評価試験の結果もしくは、修了した技能実習によって違います。
耕種農業の試験を合格、またその技能実習が修了した場合は、栽培管理や農産物の集出荷・選別など、耕種農業の全般の業務ができます。
一方、畜産農業の場合は、飼養管理や畜産物の集出荷・選別など、畜産農業の全般の業務ができます。
しかし、畜産農業の試験を合格した外国人は耕種農業の業務をすることができません。もししてしまうと不法就労助長罪に問われ、最長3年の懲役、最大300万円の罰金が科される可能性がありますので、要注意です。
特定技能外国人の受け入れの期間と停止措置
農業の特定技能外国人の受け入れの期間は最長5年となっています。5年以上の雇用は原則的に不可となっています。
また、技能実習の期間も特定技能の期間に含まれています。そのため、「技能実習2号」の修了者を特定技能で雇用すると、最長2年の勤務となりますので、注意してください。
なお、今後特定技能外国人の受け入れが停止になる可能性があります。農業分野における特定技能外国人の受け入れの人数上限は、 2019年からの5年間 で36,500人と決められています。
この上限を超えることが見込まれる場合、国が特定技能の外国人の受け入れを止めることができます。
派遣でも雇用可能
農業における1号特定技能外国人の受け入れは、直接雇用と派遣形態での雇用の両方で可能となっています。
派遣での雇用も可能となる理由は、事業所によって必要な労働力が季節や農産物によって変わってくるからです。例えば、冬には農作業できなかったり、農産物によって、収穫のピークなども変わってきます。
このような状況から1号特定技能外国人をより活用するため、農業において、派遣携帯での雇用が可能になりました。
まとめ
農業分野における人手不足が深刻になっており、外国人の受け入れが重要となってきます。即戦力が期待できる人を受け入れるため、2019年4月より「特定技能」という在留資格が新設されました。
特定技能外国人は日本で3年の実務経験がある人と同じ程度の知識・技能を有すると認定されているため、雇用後は活躍も期待できるでしょう。