
近年日本にいる中長期滞在する外国人の数が急増しており、2018年6月時点で約260万人と過去最高値になりました。
外国人からの求人応募が増えるなかで、様々な疑問が出てくるはずです。これらの答えがわからないまま、就労許可のない外国人を採用してしまうと不法就労助長罪になる可能性があります。
在留資格や就労制限など一見難しいと思うことがありますが、実は法則がわかれば簡単です。この記事では、在留カードやパスポートで就労可否が判断できる方法を紹介します。

不法就労とは
外国人が日本へ来るときは、日本政府にビザを発行してもらいます。ビザがないのに日本で働いてしまうと不法就労にあたります。もちろん就労できない在留資格を持った人が仕事をしてしまうのも不法就労です。
不法就労をさせてしまうと、不法就労助長罪に問われ、最長3年の懲役、最大300万円の罰金が科される可能性があります。決して軽い罪ではないので徹底して確認しましょう。
くわしくはこちらの記事:不法就労とは?外国人雇用におけるリスクを知る
3種類の不法就労
どのようなケースが不法就労にあたるのか見てみましょう。主に次の3つのパターンがあります。
① 不法滞在者や被退去強制者が勤務するケース
・ビザがない人(密入国の人)
・在留期間が切れた人
(例:ビザの期限が終わって更新手続きを行わないまま日本に滞在する人)
・犯罪や水商売の従事などの理由で強制退去が決まった人
② 出入国在留管理庁(旧:入国管理局)から就労許可を受けずに勤務するケース
・観光ビザで働く人
・国から就労不可と判断されたにも関わらず働く人
③ 出入国在留管理庁(旧:入国管理局)から認められた範囲を超えて働くケース
・就労許可以外の仕事をしてしまう人
・許可された労働時間より長く働く人
このような人たちを雇った場合は不法就労助長罪に問われます。
不法就労させてしまった時の罰則
不法就労する外国人を雇用してしまった場合、雇用主が不法就労助長罪に問われます。また、就労許可が確認できないまま雇った場合も同様です。不法就労助長罪に問われると、最長3年の懲役、最大300万円の罰金が科される可能性があります。
くわしくはこちらの記事:不法就労助長罪とは?知らなかったとしても処罰対象!防ぐ対策を徹底解説
また、外国人を雇用する際にハローワーク(公共職業安定所)に外国人雇用状況の届出を提出しなければなりません。提出が漏れると、1名につき最大30万円の罰金を科せられる可能性があります。
くわしくはこちらの記事:【記入例付き】外国人雇用状況届出書の書き方・提出方法・期限の徹底解説
在留カードとは
在留カードは、3ヶ月以上の中長期滞在する外国人に交付する身分証明書です。外国人が入国する際に所有するビザを入国審査官に提示し、ビザの情報が入っている在留カードをもらいます。
在留カードには、外国人の名前、生年月日、性別、国籍・地域、住所、在留資格、在留期間、就労の可否などの情報が記載されています。16歳以上の人は顔写真も必要になります。
また、穴が空いている在留カードは失効されているものです。更新した在留カードを提示できない場合、不法滞在者の可能性があるので注意しましょう。
3種類の就労制限

在留カードを確認すると、「就労不可」と記載していることがありますが、その場合でも雇用できる可能性があります。逆に、「一部就労可能あり」の記載があっても雇用できない場合があるので要注意です。
まず、就労制限について説明します。
外国人が日本に来る前に、日本での活動を国に提出します。そして国が審査を行い、どの在留資格を付与するのかを決めます。それに応じて就労制限が決まります。入国時に在留資格と就労制限を在留カードに記載するため、在留カードを見れば就労できるか簡単にわかります。
在留資格には、 「就労制限なし」「一部就労制限あり」「就労不可」 の3種類の就労制限があります。詳しく見てみましょう。
就労制限なし
就労制限なしの在留資格は「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4つに限られています。就労時間の制限もなく、パートでも正社員でも雇用形態を問わず勤務可能で、ほとんどの仕事に就くことができます。在留カードの表面に「就労制限なし」と記載されているので、確認してみましょう。
一部就労制限あり
「一部就労制限あり」の人は、特定された活動・仕事しかできません。該当する在留資格は19種類ありますが、良く見る例としては「技術・人文知識・国際業務」「技能実習1号」「特定活動」などが挙げられます。
在留カードの表記は在留資格によって違うので、次の3つを押さえておきましょう。
①「在留資格に基づく就労活動のみ可」(在留資格「技術・人文知識・国際業務」「研究」「教授」など就労ビザと呼ばれるビザ
在留資格を申請した時に、出入国在留管理庁(旧:入国管理局)から許可を得た以外の業務を従事するのは原則的に禁止されます。
例えば、「教授」という在留資格で日本へ来た人は、それで認められた以外の仕事はできません。それ以外の仕事をすると、就労制限の違反で不法就労となります。
②「指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可」(在留資格「技能実習」)
こちらは業務内容だけでなく勤める機関(会社)まで指定されています。たとえ同じ業務でも別の会社で仕事してしまうと不法就労にあたるので気を付けてください。
③「指定書により指定された就労活動のみ可」(在留資格「特定活動」)
日本に滞在し、ある活動(報酬受けられる活動も含む)を行う人に「特定活動」という在留資格を付与します。特定活動の内容によって、就労制限が違います。
例えば「就職活動」のためにビザを取得した人は、就職活動のみできます。また「ワーキングホリデー」は、休暇目的ですが、滞在期間の資金を補うため勤務時間制限なしで勤務可能です。
特定活動の内容を必ずパスポートにある指定書で確認してください。
就労不可
労働目的以外で日本に来た人の在留カードには「就労不可」と記載されています。「留学」「家族滞在」「研修」などの在留資格はすべて就労不可に分類されます。
1分以内で就労可否を判断できる4つの方法

在留カードの表面に記載されている情報は、獲得したタイミングの情報です。「就労不可」と記載があっても入国後に「資格外活動許可」を取得すれば、制限内で勤務可能となります。ですので、就労可否はもとの就労制限だけでなく資格外活動許可の有無も関係してきます。
就労可能かどうかは以下の4つの方法で判断できます。
- 在留カードの表面の就労許可欄を確認
- 在留カードの裏面の「資格外活動許可欄」を確認
- パスポートの資格外活動許可の紙を確認
- 在留資格が「特定活動」の場合は、パスポートの指定書を確認
①在留カード表面の就労許可欄を確認
まずは、在留カードを見せてもらいましょう。そもそも、在留カードを持っていないと雇用できません。
在留カードでは、在留カード番号、名前などの個人情報に加えて、就労許可の有無(青の欄)も必ず確認してください。「就労制限なし」であれば、問題ありません。
それ以外の場合は、②以降をチェックしましょう。

②在留カードの裏面の資格外活動許可欄を確認
在留カードの表面に「就労制限なし」と記載していない場合は、裏面も見てみましょう。 在留カードの裏面の左下に「資格外活動許可欄」に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」というスタンプが押されているかを確認してください。それがあると1週間に28時間以内であればアルバイトができます。
③ パスポートの資格外活動許可の紙を確認
在留カードだけでは少し不安という人は、パスポート に資格外活動許可と書いてある紙があるか見てみましょう。資格外活動許可をもらった外国人全員のパスポートに貼ってあります。
その時に、注意すべき点が2つあります。
- 同じ大きさの紙が何枚もある可能性があるので、タイトルを確認しましょう。
- 許可の期限に注意してください。期限を過ぎてしまうと無効となります。その場合は、更新した許可書がなければ雇うことができません。
④在留資格が「特定活動」の場合は、パスポートの指定書を確認
特定活動の場合、在留カードに「指定書により指定された就労活動のみ可」と書いてあります。その指定書は必ずパスポートにあります。指定書を確認しなければ特定活動の人が日本でどういう活動できるのかをわからないので、漏れがないように確認してください。
指定書で確認すべきポイント
① 本文に記載されている活動の内容。
→ 「報酬を受ける活動」と記載されている場合は就労可能。
→ 「報酬を受ける活動を除く」と記載されている場合は就労不可。
② 本文の下に印鑑が押されています。指定書の印鑑の日付と在留カードの発行日付が一致しないと指定書が最新ではないかもしれないので、最新のものを提示してもらったほうがおすすめです。
まとめ
人手不足を解消するために、今後は外国人雇用も重要になるでしょう。ただし、在留資格もしくは就労許可を持っていない外国人を雇入れてしまうと会社が不法就労助長罪に問われてしまい、罰金や懲役が発生する可能性があります。また、会社にとっても悪影響です。
そのため、在留資格と就労制限の基礎知識が必要です。採用する前に在留カードやパスポートを確認し、就労可能かどうかをきちんと判断しましょう。そうすることによって不法就労助長罪から避けられることができるでしょう。
