
新型コロナウイルス感染症の拡大防止が図られる中で、飲食店や小売店を中心に多くの店舗で休業を余儀なくされています。
そのような中でも雇用を維持するために、厚生労働省は「雇用調整助成金」の特例措置を拡充することとしました。
申請から支給までにかかる時間が従来の1ヶ月から2週間に短縮される見通しとなっているので、ぜひとも利用したい事業者も多くいるはず。そこで、実際にどのような内容なのか、申請に必要なものは何なのかをまとめました。
雇用調整助成金とは
厚生労働省は、2020年5月1日に、雇用調整助成金の特例措置について以下のように発表しました。
厳しい状況の中にあっても、事業主の皆様に、雇用を維持していただくため、雇用調整助成金について申請書類の簡素化や助成率の引上げ等を実施してきましたが、さらに休業手当を支払うことが厳しい企業においても、労働基準法上の基準(60%)を超える高率の休業手当が支払われ、また、休業等要請を受けた場合にも労働者の雇用の維持と生活の安定が図られるよう、解雇等を行わず雇用を維持する中小企業に対し、
厚生労働省「雇用調整助成金」
(1) 都道府県知事からの休業等の要請を受けた場合は、一定の要件のもとで、休業手当全体の助成率を100%にする
とともに、
(2) 要請を受けていなくても、休業手当について60%を超えて支給する場合には、その部分に係る助成率を100%にする
こととしました。
新型コロナウイルス感染症にかかる特例措置の拡大
感染防止拡大のため、2020年4月1日から6月1日までの期間中、全国ですべての業種の事業主を対象に、雇用調整助成金の特例措置を実施することとなりました。
雇用調整助成金の特例措置の詳細
特例以外の場合の雇用 | 新型コロナウイルス感染症特例措置 |
緊急対応期間(2020年4月1日から6月30日まで) この期間中は、全国で以下の特例措置を実施 | |
経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主 | 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主 (全業種) |
生産指標要件 3ヶ月10%以上低下 | 生産指標要件を緩和 (1ヶ月5%以上低下) |
被保険者が対象 | 雇用保険被保険者でない 労働者の休業も助成金の対象に含める |
助成率 中小:2/3 大企業:1/2 | 中小:4/5 大企業:2/3 |
計画届は事前提出 | 計画書の事後提出を認める (2020年6月30日まで) |
1年のクーリング期間が必要 | クーリング期間を撤廃 |
6ヶ月以上の被保険者期間が必要 | 被保険者期間要件を撤廃 |
支給限度日数 1年100日/3年150日 | 1年100日/3年150日に加え、 緊急対応期間の日数も含める |
短期間一斉休業のみ | 短期間休業の要件を緩和 |
休業規模要件 中小:1/20 大企業:1/15 | 休業規模要件を緩和 (中小:1/40 大企業:1/30) |
残業相殺 | 残業相殺を停止 |
教育訓練が必要な被保険者に対する 教育訓練助成金率 中小:2/3 大企業:1/2 加算額:1,200円 | 中小:4/5 大企業:2/3 |
詳しくはこちら:「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ雇用調整助成金の特例を拡充します」(厚生労働省)
雇用調整助成金で受給できる金額は?
前年度に支払った給与総額から1人あたりの平均給与金額を計算し、その金額に助成率を乗じた額となります。ただし、上限は8,330円(日額)となります。
例えば、平均給与額が10,000円の場合は以下となります。
- 平均給与額:10,000円
- 休業手当:6,000円(平均給与額の60%)
- 雇用調整助成金:5,400円(休業手当の90%)
さらなる助成率の拡充
新型コロナウイルス感染症の拡大防止が図られる中で、事業主には、長期にわたる休業が求められており、さらに雇用の維持や生活の安定を確保することが求められています。そのため、次のように拡充することが決まりました。
1.休業手当の支払率60%超の部分の助成率を特例的に100%とする
中小企業が解雇等を行わず雇用を維持し、賃金の60%を超えて休業手当を支給する場合、60%を超える部分に係る助成率を特例的に100%とします。(教育訓練を行わせた場合も同様)

2.1のうち一定の要件を見たす場合は、休業手当全体の助成率を特例的に100%とする
休業等要請を受けた中小企業が解雇等を行わず雇用を維持している場合であって、下記の要件を満たす場合には、休業手当全体の助成率を特例的に100%とします。
①新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づき都道府県対策本部長が行う要請により、休業又は営業時間の短縮を求められた対象施設を運営する事業主であって、これに協力して休業等を行っていること。
②以下のいずれかに該当する手当を支払っていること
- 労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っていること
- 上限額(8,330円)以上の休業手当を支払っていること(支払率60%以上である場合に限る)
申請書類の簡素化
事業主の申請手続きの負担軽減と支給事務の迅速化を図るため、雇用調整助成金の特例措置に関する申請書類について大幅に簡素されました。
記載事項を約5割削減
- 73項から38項に軽減。
- 残業相殺制度当面停止し、残業時間を記載不要に。
- 自動計算機能付き様式の導入により記載事項を大幅に削減。
記載事項の大幅な簡略化
- 日ごとの休業等の実績は記載不要。(合計日数のみで可)
添付書類の削減
- 資本額の確認の「履歴事項全部証明書」等を廃止。
- 休業協定書の労働者個人ごとの「委任状」を廃止。
- 賃金総額の確認のための「確定保険料申告書」を廃止。(システムで確認)
添付書類は既存書類で可に
- 生産指標は「売上」がわかる既存の書類で可。
- 出勤簿や給与台帳でなくても、手書きのシフト表や給与明細でも可。
計画書は事後提出可能
- 2020年6月30日までに提出。
詳しくはこちら:「雇用調整助成金の申請書類を簡素化します」(厚生労働省)
申請手続きについて
具体的な申請手続きについて
雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)令和2年4月24日現在(https://www.mhlw.go.jp/content/000625731.pdf)
具体的な手続きを見る場合はここをクリック申請様式
雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウィルス感染症対策特例措置用)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyouchouseijoseikin_20200410_forms.html)
まとめ
新型コロナウイルス感染症拡大防止に際して、休業を余儀なくされている事業所が多くなっています。
これまでと助成率は申請書類などが変わり、より申請しやすく支給額の幅も広がっています。
期間は2020年6月30日までの緊急対応期間となっているので、詳細を確認して申請することをおすすめします。